『メンタル危険水域!』(背景編)
すこし衝撃的なタイトルですね。今回は、社会的病理現象となって久しい『職場のメンタルケア』が生じる背景、そしてその解消策について、2回シリーズでお話しします。
結論からいうと、すべては上司の言動ひとつ。
メンタルケアを出さない職場づくりに向かって、さあ、学びを始めましょう。レッツビギン!
蛮行の時代
私が社会人となった頃は、好景気の中で社会全体がバブル経済へ突き進んでいた時でした。
やがてテレビでは『24時間働けますか⁉️』と、エナジー飲料のコマーシャルが放送され始めます。
パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、反LGBTなどなど、今は禁止されているさまざまな不適切な行為がまかり通っていた時代です。
少し具体例をあげましょう。
職場では平気で結婚退職が取り沙汰され、女性社員がお茶汲み、コピー取り、会議中の留守番などを余儀なくされていました。上司が部下を怒鳴りつけ、執務室でも会議室でも誰かれなくタバコを吸い、宴席ではいわゆる『春歌』が手拍子で歌われていた…枚挙にいとまがありません。
私は中高と男子校でしたが、いい大人たちが品のない話題で盛り上がる宴会は大嫌いでしたねえ。でも出席しないと変な目で見られたものです。
こうした『蛮行』が日常的に行われても、正面切って抵抗する人は、日本ではまだ少なかったのです。
要は何でもアリアリの混沌とした時代。そんな時代に、旧来型職場の問題点が沸点に達したことを象徴する出来事が起こります。
出勤できない
ある日、男性の管理職が、職場のストレスから精神的に病んで出勤できなくなったと聞きました。
新人で配属された企画部門で、彼は既に財政を担ってバリバリ働いていた目指すべき職業人の典型でした。
豪快な雰囲気があって、いつも笑顔のキャラクター。周囲の期待も受けて管理職試験をパスし課長になった、いわゆる王道を歩いている方でした。
よく知っている方なのでショックを受けましたが、その一方で、私は次のようにも感じたのです。
「自ら望んで管理職になったのに、心の弱い人だな。」と。
私は、職業人を取り巻く過酷な状況に関して、あまりに無知で、しかも古典的な組織風土に取り込まれてしまった思いやりに欠ける若造だったのです。
追い詰められる組織人
心を病む事例は、確実に増加し表面化していきます。
私の周囲でも、学生時代の友人や職場の同期など親しい人たちが、うつ症状から仕事を離れていきました。
その頃には、仕事に関わるうつ病が社会問題として取り上げられるようになっていました。
組織に属する職業人たちは、与えられた役割と成果への評価や、上司、同僚、部下との人間関係の中で日々を生きています。
旧来型の職場では、成果をあげられず、人間関係を円滑に結べない構成員に対して、手を差し伸べるシステムはまだ育っているとは言えませんでした。
古い体質の組織の中で、自分の存在意義に疑問を感じ、疎外感を強め、自己肯定感を持てなくなっていく組織人たち。
出勤できなくなった管理職のケースは、その一例に過ぎません。
日本は、メンタルケアの危険水域を越える状態に陥っていたのです。(次号『解決編』へ)