『つなぎ むすび いかす〜 エイズ予防と朗読劇』

パートナーシップ・コンサルタンツの原点はここに‼️

7月から9月にかけて6回にわたり、パートナーシップ・コンサルタンツが手がけてきたコーディネートのサンプル集(食、医療、宿泊、イベント、デザイン、資金)を紹介してきました。

10月からは、創業の3要素『つなぎ』『むすび』『いかす』についてです。

私たちが、誰と誰をつなぎ、何と何をむすび、どのようにポテンシャルをいかしてきたかについて、ご紹介します。

その前に、3要素に取り組むキッカケとなった若かりし日の出会いから。

そう、どんなことにも『はじめて』は存在します‼️

ことはじめはエイズ

AIDSパニックが日本でも起こりました

1980年代後半、HIVウィルスの感染によって発症するAIDS(後天性免疫不全症候群)が、日本でも流行しはじめました。

当初、性風俗での感染情報から始まり、男性間の性行為、輸血や血液製剤による医療行為感染など、原因が徐々に判明していきます。地域差別や国籍差別、人との接触回避など、社会的にエイズパニックとも言える現象も起きていました。

どことなく、新型コロナウイルスに際しての社会全体の反応と似ているように思います。

公衆衛生の現場、特に保健所を抱えている基礎自治体(「保健所設置市」と言います)が、予防啓発と感染者の人権尊重に取り組む必要に迫られます。

日本有数の繁華街と歓楽街を抱え、ディスコブーム真っ盛り、そして奔放な性行動が急速に進んでいった時代の首都東京。その都心にあって、3つの保健所を擁し、多くの若者が訪れる都心自治体の港区

まさに私は港区にいて、しかも保健医療と公衆衛生を担当する組織に身を置き、治療法のないこの病と正面から向き合わなければと考えていました。

仲間と問題意識の共有

そのころ私は30代前半で、保健医療サービスの管理や企画を担っていました。

仲間との議論なしには成し遂げられなかった❗️

正直な話、保健所の現場には、避けて通ろうとする医療系公務員、果ては「若者の奔放な性行動のせいだから自治体が担う仕事ではない」と言いきる幹部すらいました。その一方で、手を打つ必要性を感じている仲間も多く、大いに勇気づけられます。

市民に感染が広がらないように注意を喚起し、しかも、身近な感染者に対して差別の目を向けず、社会全体でこの未知のウイルスと病気に立ち向かうには、公衆衛生の立場から何ができるだろう。

単に感染の危険性を強調するだけではなく、こうした社会的な問題点を解消するための啓発活動について検討を開始しました。

そして「◯◯区民」という住民登録の枠にとらわれず、街を訪れるあらゆる人々とエイズについて正しい情報を共有し、行動につなげる啓発活動とする方向性を確認します。

映画や舞台の感動は疑似体験効果をもたらします!

さて、当時も今も同様ですが、私は自分の直感を信頼しています。

その時も、市民の行動を誘発するには「エイズにまつわるさまざまな出来事を『疑似体験』していただくことが重要」と直感しました。

ツールには、映画、ドラマ、演劇などによる視聴覚体験が最も効果的であると結論づけます。

私たちには、映画を撮ったり、ドラマの脚本を書いたり、舞台で演技する技量はありません。しかし広い業界のこと、啓発に活用できる優れた作品は、きっとあるに違いないと考えました。

この判断は、のちに苦労の種となります。

朗読劇との出会い

感染者の人権意識に配慮し、厚生省(現在の厚生労働省)を批判せず、HIVウイルスとエイズを深いところで理解し、予防や治療、人権擁護の行動に市民を駆り立ていく…。

俳優が着席で脚本を読み、言葉で演技するのが朗読劇です❣️

広いエンタメの世界には、それに近い作品がきっと多くあり、その中から優れたものを選べば良いと楽観視していました。

ところが、こんなにも大きな社会現象であるのに、エイズを題材とした数多くの映画や演劇に足を運んでも、どれもしっくりきません。前年度、紙ベースで作成し全世帯に配布して好評を得た『エイズワクチンBOOK』を越えよう、疑似体験によって感染と人権侵害を予防し、支援がもたらすメリットを拡大しようと夢見ながら、私は毎週末、映画館や劇場をわたり歩き、途方に暮れていました。

その時は突然に訪れます。

小劇場の看板の前でふと足を止め、ダメもとだと思って入場しました。

1993年11月22日(月)~23日(祝) 全5ステージ 朗読劇『今は涙するしかできないけれど』 大塚ジェルスホール

https://akio19650517.wixsite.com/gekidan/post/003『今は涙するしか出来ないけれど-』

当時のポスター、チラシから

開演直後から終演まで、セリフから伝わってくる緊迫感に身を固くし、鑑賞後もしばらくは席を立てませんでした。

朗読劇は、問題の確信を鋭くつき、誰を批判することもなく、その悲しみと慈しみと助け合いの大切さを教えてくれる優れた作品でした。

「やっと出会えた‼️」

まだ、製作者側との交渉が残っているにもかかわらず、肩の荷が降りてホッとしたことをよく覚えています。

終演後、狭い階段の下で観客を送り出しているスタッフの一人に声をかけ、主催者はおられるか尋ねました。

そしてこの日、脚本・演出などを手がけた朗読劇の作者でありこの公演の総括責任者・篠原明夫さん(↓現URL『ザ・シノハラステージング』)と初めての対面を果たしたのです。

https://the-shinoharastaging.com/

https://akio19650517.wixsite.com/gekidan

この舞台と出会ったこと、そして啓発活動の中心にこの朗読劇を採用したことは、その後の私の職業生活に、そして今の仕事にも、大きな影響を与え続けています。

つなぎ むすび いかす原体験

朗読劇の鑑賞効果を狙ったこのエイズ予防啓発キャンペーンは、どのような『繋ぎ・結び・活かす』結果をもたらしたのでしょうか。

デザイン性を意識して製作した港区のフライヤー

まず、芸能活動である大衆演劇と、地方自治体の公衆衛生行政とをつなぎました。

次に、朗読劇のもつ高度な説得機能と、市民意識改善に向けた行政の啓発活動とを結びつけました。

そして、優れた劇団のパフォーマンスと、鑑賞者を選ばない公共施設が、両者の足らざる部分を補い合い、メリットを活かし合うことになったのです。

この成功体験こそが、パートナーシップ・コンサルタンツの原点と言えるでしょう。

私たちは、この初心を忘れることなく、B to B、B to G などのマッチングにあたって『つなぎ・むすび・いかす』の視点に立ち取り組んでまいります。皆様からの難しい案件のご依頼を心からお待ちしております。

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『つなぎ むすび いかす〜 エイズ予防と朗読劇』” に対して2件のコメントがあります。

  1. 篠原明夫 より:

    それはきっとリップサービスなのでしょうが、
    「99件のエンターテイメントを観たけどどれもしっくり来なくて、これが最後と思って大塚の小劇場に入ったんです。100件目に本物に出会いました。」
    と言う言葉がどれほど僕を勇気付けて下さったことか。

    演劇で食べて行けると思ったターニングポイントでした。

    そしてこの作自体が『繋ぎ』となり、
    教育委員会時代の、ネットいじめ朗読劇で『結び』、
    防災演劇という『活かす』へ繋がりました。

    今、その防災演劇が映画になります。
    https://camp-fire.jp/projects/view/627106

    ちょっと宣伝になってしまいましたが、
    『繋ぎ・結び・活かす』はそれ自体、繰り返しながら途方もなく大きくなっていくのだと感じました。

    そんな体験をさせて頂けたことに感謝です。
    有り難う御座います。

    1. MASYAS より:

      最高のメッセージをご本人からいただけるとは感激、光栄、感謝の気持ちでいっぱいです。篠原さんという人とその作品に触れる機会が増えることは、社会の進歩に必要なこと。だから、篠原さんが今、舞台に限らず人材育成、こども支援、そして映像の世界へとますます活躍の分野を広げておられることを心から嬉しく思います。
      当時の私は、ブログに書いたとおりで、自分達では出来ない何かを探しているところでした。役者から直に影響を受ける『舞台』に希望を託すところまでは正解だったと思います。しかし、それが存在しなければどうにもならず、正直な話し、これで最後だとやけ気味に入った小劇場で篠原さんの舞台と出会ったのです。「リップサービス」なんてとんでもない❗️それほどの喜びだったのですよ。今も私にとって『困った時の篠原さん』は変わりません。これからも、ご活躍を注視していきます。羽ばたき続けてくださいネ❣️

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