組織経営セミナー②できるヤツはコミュニケーター
組織経営セミナーの第2回は、異なる個性の人間で構成される職場環境のマネジメントです。
組織人は、さまざまな同僚、上司、部下に囲まれながら、日々を過ごしています。ここでは、組織人が備えるべき能力について論じます。
時として出現する組織人の困った二つの類型、ライアーさん及びアンチさんを例に考察していきます。
昨日と違うよ❗️ライアーさん
こんな人に出会ったことはないでしょうか。虚言癖、嘘つき、いわゆる『ライアーさん』です。大人の社会にもいます。もちろん、官業の世界にもいました。
ライアーは、その場にいる人をいつも気にしています。強く発言する人や自分にとって都合の良い人に迎合しようと、虎視眈々(こしたんたん)その機会を狙っています。
事実を付き合わせれば、矛盾していることは簡単にわわかるのに、ライアーはその場の雰囲気に合わせて、昨日とは違った新しい話を創作します。その時限りで、都合の良い方向へ結論をまとめることに抜群の能力を発揮します。
こうしてライアーは、平気で上司の指示や組織の決定事項に反した言動をとりますが、不思議なことに、後で辻褄が合わなくなることはまったく気にしません。
よく言えば八方美人、悪く言えば二枚舌。私の経験では、嘘が露呈し、ライアーは、同僚からも上司からも信頼を失う運命にありました。
おうおうにしてライアーさんは、組織を渡り歩き、どこかにとどまり続けます。涼しい顔で皆さんの隣で仕事をしているのです。
なぜ拒否る❗️アンチさん
これも困りものです。何ごとにも反論する否定論者、いわば『アンチさん』。
写真のような権力への抵抗活動や反戦運動のことではありませんよ。ましてや、アンチ巨人のような平和な話ではありません。
私たちの意欲や生産性を著しく低下させる悪魔のささやきを放つ人、それがアンチさんです。
取締役会(会社組織)や庁議(行政組織)で意思決定された組織の決定事項は、役員理事クラスから実行組織へ、いわゆる上流から下流へと流れていきます。部長会議→課長会議→係長会議のように。
多くの場合、アンチはこのように登場します。
「本当はそう思います。理想だと思いますよ。But❗️(ですが)
あんなことが障害です。こんなことが危惧されます。そんなことも懸念されます。
だから、時期尚早で私は反対です‼️」
問題は、このBut以下の文脈です。同僚たちの意欲をそぎ、巧妙に熱意へ水をかける、その理由と結論の組み合わせが絶妙であるがゆえに共感を呼んでしまうことです。
世の中、課題のない真っ白で苦労のない仕事なんてありませんが、確かに論理的で何か問題がありそうに思えてきます。
こうしてアンチさんはどこの組織にも紛れ込み、ちゃぶ台返しを狙っているのです。
猛獣の能力を引き出せ
百害あって一利なしのような嘘をつく人、何かといえば物事の進行をはばむ否定論者。まるで、組織に放たれた猛獣のよう…
ただ、こうは考えられないでしょうか。
ライアーさんは、その場を切り抜け穏便に済ませることをいつも考えぬいていて、常に頭をフル稼働させている
アンチさんは、組織が一つの方向へむけて動き出す時に、その激しすぎる変化を危惧して警鐘をならしている
もちろん、根っからの詐欺師やテロリストは別ですけれど、こうして見ると、組織の猛獣たちを一概に悪と決めつけるのではなく、彼ら彼女らの言動には、なにやら組織にメリットとなる役回りがあるような気がしませんか?
不思議なことに、多くは理屈で話せる可能性が高い人たちです。上手くコントロールすれば、仕事の混乱や外部との対立が回避され、急激な変化を穏やかに着地させる効果があります。
あとはコントロールあるのみ。私たちのコミュニケーション能力と対話能力が試されます。特に組織のリーダーは、次のようなコミュニケーターとしての高い能力が求められます。
ライアーへの対処に必要なことは、役割を与え放任せず、リーダー自ら進行管理すること。「嘘をついてもすぐバレるぞ」「知っているぞ」とプレッシャーをかけ続けることです。もともと口はうまいのですから、その能力が発揮される仕事を与えましょう。
アンチには、その主張を一対一でじっくり聞くことから間合いを詰めていきます。否定的意見、抵抗姿勢の元凶は、別のところに原因がある可能性があります。話を聞き課題を解決しようとするリーダーの姿勢は、信頼につながります。指示内容自体に反論があるときこそ、さらにじっくり時間をかけて問題意識を聞き出し、歩み寄る提案を作りましょう。
メンバーの個性を輝かす組織
こんな言葉を組織運営の極意としています。
志を高く スタンスは低く 目を見て話し 心を開いて 相手を尊敬し わかろうとする
なにもこれは、ライアーやアンチなどの猛獣に限った極意ではありません。また、リーダーだけに限った極意でもありません。組織のメンバーが、一人ひとりと向き合って、互いにその能力を引き出すため身につけるべき、あたり前の組織運営ルールなのです。
ひとたび人事異動があれば、メンバーの個性は入れ替わります。顔ぶれによっては、組織の雰囲気、メンバー間の分担や動き方に大きな変化が生じることも少なくありません。
そんな時こそ、組織人は『組織運営の極意』に沿って、メンバーの一人ひとりと対話しなければなりません。たとえ小さな組織でも、みんながコミュニヶーターとなった組織は、それぞれの個性が輝き、優れたパフォーマンスを示すチームとして高く評価されることでしょう。