組織経営セミナー③できる組織はトランスフォーマー
個人事業主でない限り、仕事をする多くの人は、規模の大小はともかく組織の中で仕事をしています。
どんな組織にいても、人の意思で物事が決まっていく以上、はたらく原理・原則は、官民を問わず同じ。
今回は、現代社会を生き抜いていくうえで、必要不可欠な組織にまつわる経営知識とトレンドについて、学んでいきます。
ところで組織ってなに?
ひとことで言えば、組織とは『人が担う権限と責任の体系』です。むずしいですか?
組織には、行うべき仕事の範囲があり、これを分掌事務あるいは組織分掌などと言います。
分掌事務から外れて仕事をすると、「キミ、うちの組織にその権限はないよ」と、たちまち上司からたしなめられるでしょう。一方、分掌事務以外のことで、責任を問われそうになった時は、「キミ、それはわれわれの組織が負う責任ではないんだ」と守ってくれます。
このように、分掌事務という厚い壁によって、組織は、時に人の行く手をはばみ、時に人を守ってきました。
臨機応変に姿形を変える⁉️
こうした固定的な組織の考え方と運用の仕方は、静的な組織運営ということができます。
一方、複雑化し流動的な現代社会では、もっと柔軟に事務分掌や権限を乗り越えることができ、それに応じて責任をも受け入れる組織、つまり、より積極的かつ能動的に活動する動的な組織も求められるようになりました。
これが、権限や責任の壁を乗り越えて組織を運営する、動的な組織の運営手法です。
直面する課題の困難さや複雑さに応じて、解決に向かうために最も適切なシフトを判断・選択し、臨機応変に自らを変えていく⋯
あたかもトランスフォーメーションによって、自ら形態を変え、新しい敵と対決する変形ロボット『トランスフォーマー』のような組織です。
静的な組織
動的な組織を学ぶ前に、まず、伝統的な組織形態であるツリー型組織を紹介します。
権限と責任が体系的に整理されている見事な組織図ですね。静的な組織形態の典型と言えるでしょう。
権限と責任の体系がシンプルに枝分かれしています。重複や錯綜が排除され、どのメンバーがどの課や部に属しているか、そして、何部長、何課長の指示を受けるかが一目瞭然でわかりますよね‼️
官公庁で採用されつづけている典型的な組織とされているため『官僚組織』と言われています。
行政組織は例外なくこの形態の組織が基本形ですし、多くの民間企業でも、こうした組織図を持っています。しかし、これで安心していられないのが、民間企業の性(サガ)と言えるでしょう。
動的な組織
静的な組織では物足りなくなった民間企業から生まれたのが流動的な組織の典型、マトリックス組織。次のような形態を取ります。
官僚組織が、縦系列の直列型だけなのに対して、マトリックス組織では、縦と横の双方向から指示のラインが伸びていることがおわかりいただけると思います。
この組織では、縦系列の静的組織を置きながら、特定期間に達成すべきプロジェクトや特定のエリアに限定した活動などのために、静的な組織のメンバーを横断的に囲い込みます。
このため、構成メンバーである社員や職員は、静的組織、動的組織双方の複数の上司から指揮命令を受けます。
静的組織では権限範囲が限定されるため、より深くより専門的なプロフェッショナル性が求められます。
一方、動的組織では、静的組織での役割に加えて、分掌事務に縛られることのないプロジェクトスタッフとして、より自由かつ活動的に振る舞うことが求められます。
あたかも新しい組織が誕生したかような組織経営の姿を内外へ示すことができます。そして、何よりも重要なことは、構成メンバーが、静的組織で感じている『閉塞感』から解放され、これまでの権限と責任の外にある新しい活動領域をもターゲットとして、能力を発揮する自由を与えられるのです。
『眼力』と『腕力』
組織形態を選ぶ力と組織の機能を駆使する力は、どちらも組織経営者に必要な能力です。
今回のブログでは、『できる組織はトランスフォーマー』をタイトルとし、「解決に向かうために組織が自ら姿を変えていく」と述べてきました。
しかしです。そこに、隠れた主語があることに気づきましたか?
『組織』を静的組織のままでいくのか、動的組織に変えて取り組むのか、決めるのは、組織を経営する『人』の考え方次第です。組織は自らを変えられません。必ず、私たち組織を経営する人間の価値基準に基づく、評価と判断と実行があります。
つまり、組織のトランスフォーメーションを演出する監督役は、他ならぬ組織をコントロールするあなた自身なのです。
常に適切な組織形態を予測し、選択し、あてはめてみて、微調整しながら、課題の解決へ向けて進んでいく重大な役割を負っています
静的な官僚組織、動的なマトリックス組織。
組織という大海を泳ぐ私たちが、この組み合わせを見極める眼力を身につけ、組織のパフォーマンスを最大化する腕力を備えたとき、私たちは組織経営のマイスターとして、課題に力強く立ち向かうことができるでしょう。