『その提案書、大丈夫? ❷ 提案評価 』
多くの事業者は、こんなことを思ったことがあるでしょう。「点数じゃないよ、もっと全体を評価してほしいよなあ。」と。
地方自治体が公募する事業提案の選考を理解するシリーズ、第二回は提案書類の評価についてです。
点数重視という必然性
提案書類には、全体を通じて感じられる熱量、理念の強さ、論理的思考など企業風土や姿勢が現れます。
私の経験では、そうした姿勢の感じられる提案書は、任せて安心な力のある事業者から提出されることが多い。
点数偏重は、このような提案書の肝心な特徴を見逃しがちです。
そうした事業者特有の雰囲気は、評価項目や採点基準には反映しにくいものなのです。
その上、評価する側も力量は様々で、提案書から行間を読み取れる委員は必ずしも多くありません。そして、自治体が事業者を選んだ理由を議会などへ説明する際、点数の比較は最も説得力があります。
つまり、事業者(評価される側)が知っておくべきことは、点数重視は選考委員会の宿命だということです。
勝利の提案書づくり
それでは、勝ち抜ける提案書類を作成するために、最も重要なことは何でしょうか。
それは、『提出書類の各様式シート』と『公表された評価項目』との相関関係を徹底的に社内共有することです。作成、点検、修正、意思決定に関わる各人がその対象です。
親切な自治体では、様式と評価項目の対応関係を公募要綱で一覧表にして示しています。シッカリ共通認識としましょう。
提案書類は、多くの場合、複数人で分担して作成しますから、各担当が自分の作っている様式は何を評価されるシートに当たるのかを認識して作成します。それだけで、提案書類の質が高まります。
点検や修正、意思決定に関与する上席の社員も、この対応関係を知ったうえで加除修正の指示をします。こうすることで、選考委員を読む気にさせる提案書類が出来上がります。
さあ、書類選考通過へ
私が関与した選考では、評価を意識しないで作成された要求逸脱型のシートを意外に多く見受けました。
それらは読むに値せず5段階ランクでDかE評価となる傾向にあります。一方、意識して作成されたシートの評価は最低でもC、加点要素があればB、Aとなります。
一次審査である書類選考は、こうして採点された各委員ごとの合計点、それらを合算した総合点を集計した後、選考委員会で行われます。
全ての選考委員が全体的採点の考え方、各提案への評価や印象など特徴的な採点ポイントを述べて意見交換しますが、その議論の際に最も重要な指標は評価点数です。
各選考委員が、その点数をどうしてつけたか、という視点から発言するからです。
こうして、一次審査を通過する提案が決定されていきます。